テクニックに逃げてはいけない。

世の中には沢山の情報が溢れています。誰でもカンタンに出来る!とか・・・これさえ覚えればカンペキ!なんて具合にまるでゲームの攻略本みたいに沢山のノウハウが溢れています。

テクニックに魅了された18歳

大学一年生の頃の話。軽音楽部に所属していたボクのパートはドラム。毎日、昼過ぎぐらいに起きて向かった先は部室棟の地下にあった音楽練習室。みんなが授業に出ている間、ボクはずっとドラムを叩いていました。単位は取れなかったけど、ドラムは上手でした。ほんと、バカ息子(笑)

アキユキっていうドラム仲間と一緒に練習したり、海外の教則ビデオを借りてきて一緒に見たりしました。僕らのヒーローはTOTOのジェフ・ポーカロ。バディ・リッチ。デイヴ・ウェックルにスティーブ・ガッド、デニス・チェンバース。

一般の人は誰も知らない海外の超一流ドラマー達に影響を受けていました。僕のブログ読者は見ても全然面白くないだろうけど(笑)みんな、超絶なテクニックの持ち主。

https://www.youtube.com/watch?v=XT-CZe-mlVY

ボクはとにかく上手くなりたかった。そのために東京に来たわけです。大学で勉強するつもりは全く無かった。

ボクにとってドラムとはアイデンティティーであり、人生そのもの。当時付き合っていた彼女に「バンドと私どっちが大事なの?」と聞かれて返答に困ったこともあります。「きみだよ」なんて言えるぐらい器用だったら良かったのですが、ボクにはドラムしかありませんでした。

先輩ベーシストの言葉

浅賀さんというベーシストがいました。バンドサウンド、アンサンブルに対する考え方の多くを教えてくれた先輩。というのも、バンドのサウンドはドラムとベースが屋台骨になって組み立てられています。ギターやピアノは無くても成り立つけれどドラムとベースは絶対に必要なパートなんですね。3歳年上で軽音楽部の元主将だった浅賀さんとバンドをやることは、僕にとってとてもエキサイティングなことだった。

大学時代のボク。

ボクが個人練で覚えてきたフレーズを張り切って披露すると浅賀さんがこう言いました。

「タクホ、うるさい」

「歌の邪魔するな」

「アンサンブルはテクニックを披露する場ではない」

僕は浅賀さんに認めてもらいたかった。そのために個人練習をして、新しく覚えたフレーズを使ったりしていた。でも浅賀さんはYESをなかなかくれなかった。今ならその理由がわかるけれど、要するに僕は「周りと調和がとれてなかった」のであります。

上手くなりたい。自分の上手さを認めさせたい。

バンドサウンドのゴールは心地よい音と一体感でリスナーを心地よい気持ちにさせることだったりするはずなのですが・・・僕はテクニックを披露すること、自分が上手だと思われることが先に出てきていたのでした。

テクニックだけでは伝わらない。それを使うことは目的ではなく手段に過ぎないのだ。

音楽を通じて学んだことが僕の写真に対する考え方ベースになっています。でも、テクニックを覚えてなんとかしたいという気持ちはすっごく良くわかる(笑)心が弱くなったりすると「テクニック」に逃げたくなる。誰でも出来るカンタンでお手軽なノウハウが欲しくなる。世の中には沢山の情報が溢れています。それに踊らされてしまうんです。

でもやっぱりテクニックに逃げてはいけないのだ。写真を撮るときいつもそんな事を自分に言い聞かせています。

ミュージシャンに大切なのは「良い音を出すこと」であります。カメラマンにとって大切なのは「真実を写すこと」「いい瞬間や表情を捉えること」ではないか・・・昔を思い出しながら考えたのはそんなことでした。

 

 

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