テクニックより伝える力を磨く

ミュージシャンになるために写真学校へ行ったバカ息子

2002年大学5年目の春。取得できてない残りの単位数より、どうやったらもっとドラムが上手くなれるのか?それがボクの感心事だった。ビートルズやボブ・ディランが大好きで写真に興味はなく毎日バンド活動で忙しかったが、写真館の3代目だった親が学費を出してくれるというので、「もう一年バンド活動できるやん!」そう思っていくことにした、今日はそんなバカ息子時代の話・・・・(笑)。

そんなわけでミュージシャンになるために、日本写真芸術専門学校に入学したボク。ふんぞり返って足を組み、校長先生の長い話を聞いていたが、「カメラマンは眼を鍛えろ」というコトバが耳に入ってきた。校長先生は日本を代表する写真家の秋山庄太郎さんだった。その時は知らなかったけど(笑)

「そうか、ミュージシャンは耳が命だけど、カメラマンは眼なんだな」2年生の時に校長先生は亡くなってしまったので、1対1で話したこともないし教え子というには程遠かったが、それでもボクにとって大切な指針になっている。

眼を鍛える

目を鍛えるとは、当たり前だが視力を良くすることではない。ものを見る眼を養うということだ。人を見る眼を養うということだ。

物事をどんな視点で見るのか?

人の何を見るのか?

ウソやごまかしではない、真実を見極める眼。カメラの腕より、物事を見る眼がカメラマンの価値だと思う。 

by 阿部拓歩(笑)

ジョン・レノンの歌は上手いのか?

当時のボクのスター、ジョン・レノン。

元ビートルズのジョン・レノン。1980年にファンに射殺された。社会を動かす力を持っていた。

ヘタウマという言葉がある。発声は上手じゃないし音程もバツグンとは言えないけど味がある。そんなミュージシャンの事をヘタだけど上手い・・・・略してヘタウマなんて尊敬を込めて言ったりする。ジョン・レノンのギターも歌もけっして「お上手」ではないが、誰も真似のできないサウンドを聴かせてくれる。技術的に見たら欠点があってもなんかイイ。心を震わせる力がある。ヘタウマな人が共通して持っているのは「伝える力」だ。

何故、眼を鍛えるのか?

カメラマンの社会的な役割とはなんなのか。カメラという道具を通じて世の中の役に立つとしたら、何が出来るのか?報道写真、家族写真、ファッション写真、結婚写真、風景写真。いろんな写真があり、その道のプロフェッショナルがいる。そんなカメラマンが果たしている役割・・・・それは伝えることだと思う。

分娩室で撮った娘の写真。初めての子供が生まれてきた感動を3年経った今でも伝えてくれる。出産に立ち会えなかったボクの悔しさも(笑)

いつもお世話になっている近藤太香巳社長の講演の様子。ウェブやパンフレットなどに載せる写真を通じて本人がその場に居なくても伝えることができる。

戦争の悲惨さを伝える報道カメラマン。オシャレなコーディネートを魅せるファッションカメラマン。家族が一緒にいられる今の幸せを後世に伝える写真館のカメラマン。みんな何かを伝えている。

テクニックという腕も大切だし、それを磨くのは当然ではあるが一番大切なのは「何を伝えるか」だ。写真の使い方によっては意図したものと違うことが伝わることもある。間違ったことを最高のテクニックで伝えたら、とても恐ろしい。

そうならないために眼を鍛えなければならない。「校長センセイがあの時、どんなつもりで言ったのかは分からない。でもきっと、ヘタでもいいから人に伝わる写真を撮りなさい。ウソやまやかしに生きるのではなく本当に大切な事を伝えなさい。そんな事を教えてくれたのではないだろうか?と思う。

人物を撮るカメラマンとして、人の何を見るのか。その人の持つ個性やパーソナリティー、本当の気持ち。賞を撮るような写真じゃなくてもいい。カメラの扱い方は上手じゃなくてもいい。被写体の真実を写し出せるカメラマン、人と深いコミュニケーションを取ることができるカメラマンになりたいなと思います。

そんな事を感じた夏の終わり、、、あー今日もうざい話でしたが、最後にもっかい言わせてください。

物事をどんな視点で見るのか?

人の何を見るのか?

ウソやごまかしではない、真実を見極める眼。カメラの腕より、物事を見る眼がカメラマンの価値だと思う。 

by 阿部拓歩(笑)

ではでは。

 

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